続いて教育講演
『リウマチ診療で必要な妊娠に関する知識』を聴講。日本の母性内科の第一人者でもある国立成育医療研究センター 周産期母性医療センター長の村島温子先生の講演です。
国立成育医療研究センター
要点を整理しますと⇒成人病は子供がお母さんの中にいるときから始まっている。体が小さい赤ちゃん程将来臓器の小ささから成人病が起こり易い。瘦せすぎのモデルのお母さんの赤ちゃんは将来糖尿病等が起こりやすい。何とか妊娠時に胎内環境を整えないと。35歳を超えると妊娠率がグングン落ちて40歳代では1%まで低下。リウマチを理由で医師の主導で妊娠を先延ばしをしてはいけない。一方でリウマチが寛解状態でなければ妊孕性を落とすとコメント。

活動性が高いと妊娠し難い?➡以前から言われている。
消炎鎮痛剤を内服していると妊娠し難い?➡ 着床がCOX2が必要でNSAIDを使用するとダメ?仮説レベル。
バイオ使用すると妊娠し易い?➡特にシムジア®とエンブレルは安心。
TNF阻害剤は妊娠が分かるまで使っても大丈夫となった。妊娠が分かれば中止。
IgG抗体製剤は胎児以降率が母体より高い。母体の安全面での研究はエンブレル®よりシムジア®の方が良く研究されているとの事でした。
妊娠で3分の2の人はリウマチの病状ががよくなります。妊娠中に寛解しないと母性の妊娠中毒症、胎児の低体重の原因となる為、治療前に深い寛解が必要と言えます。年齢に応じた母体に安定的なbestなリウマチ治療が重要で20歳代では積極的 30歳代では妊孕性の低下する時期から時間が無いので妊娠を考えて治療すべきとコメントされておりました。
SLEの妊娠認容の条件
①維持量のステロイドで半年落ち着いている。
②臓器病変が無い
③本人ならびに家族がリスクを理解した上で、強い挙児希望がある事
⇒迷いがある方には勧めないとの事。SLEの患者さんは妊娠しても妊娠中や出産後はかなり病勢が悪くなる事があると村島先生は強調されていました。妊娠の際に最も大敵なのが抗リン脂質抗体症候群の合併です。特にSLE患者さんでのループスアンチコアグラント陽性者の流産率は突出して高いのが特徴です。

妊娠中はステロイド製剤は出来るだけ減らす事が重要で、ステロイドの代わりとしてアザチオプリンが現在有望との事。又タクロリムスやシクロスポリンもSLE患者さんが妊娠中に安全に使用できる薬剤とされています。

母性内科的にもう一つ問題となるのが抗SS-A抗体です。全くの健常者でも陽性者が2%も存在し、SLE患者さんでも陽性者は大変多く40%近く存在します。有名なのはシェーグレン症候群で80%と突出して高く、この抗体が胎盤を通して胎児に移行すると1%の確率でお腹の赤ちゃんに心臓ブロックが起こってしまうのです。
危険因子として…
心臓ブロックの赤ちゃん出産既往⇒高度リスク
抗SS-A抗体32倍以上⇒中等度リスク
4~16倍⇒軽度リスク
4倍未満⇒リスクなし
…と判定をしリスク管理を行っています。

軽度から中等リスク患者さんに於いては18~26週まで胎児心臓エコーフォローが必要とされます。抗体SS-A抗体を定量する場合は様々な検査法が存在しますがELISA法よりも二重免疫拡散法で測定する事が重要との事。

関節リウマチに話は戻り、妊娠前に是非中止すべき薬としてメソトレキセレート(MTX)、レフルノミド(アラバ®)ミゾリビン(ブレディニン®)が挙げられます。MTXは3ヶ月の休薬期間が必要とこれまでは言われていましたが、最近の知見としては1回生理を見送ると大丈夫(1か月)となりました。

最近は若い男性リウマチ患者さんが多く見られ、抗リウマチ薬による精巣機能低下が問題視されています。男性避妊の場合でも3か月はMTXの休薬が必要との事でしたが、ドイツの論文に次いでフランスの論文が発表され、患者数は少ないのですがこちらもMTXを休薬せずに受精しても胎児に影響なく妊娠可能と報告されています。
当院のフリーページに詳細を掲載しております(^_^)/
リウマチ膠原病と妊娠のお話
リウマチ膠原病と妊娠について リウマチや膠原病でも妊娠は十分可能に。最新の知見を報告します。
http://www.touei-clinic.jp/original27.html
2017-04-21 23:32:00
講習会・勉強会・資格認定
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