医療法人 東永内科リウマチ科

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...OSAKA Osteoporosis Conferenceにて講演して参りました!(前編)

...OSAKA Osteoporosis Conferenceにて講演して参りました!(前編)


7月6日(土)にてOSAKA Osteoporosis Conferenceにて講演して参りました。今回は北大阪でも三島、高槻市の実地医の先生方が御集りになります会でありました。35~40名の先生方が御参加されたとの事。いつもお世話になっております、うえだ下田病院 整形外科部長 佐藤敦先生に座長をお努め頂き講演が始まりました。骨粗鬆症の権威であります鳥取大学医学部教授 萩野 浩先生の前座として講演であり、ちとプレッシャー?の為、前半はいつもは無い『噛みまくり』状態でした(-_-;)。
  
前半はビスフォスフォネート➡SERM➡活性型ビタミンD製剤の使用のポジショニングについて、中盤は初診で明日にでも骨折しそうな重症骨粗鬆症患者さんにどう対応するかについてお話しました。今回もプロ野球のピッチャーの継投に例え、腰椎骨密度と大腿骨の骨密度が相当低値に加えて既存椎体骨折が多数存在している重症骨粗鬆症患者さんに、効果がゆっくりのビスフォスフォネート製剤で骨折予防ができる?か…
  
それともいきなり抗RANKL抗体のデノスマブを導入?この問題を解消すべく本年3月発売されました抗スクレロスチン抗体でありますロモソズマブの有用性を示した大変権威のある医学論文誌【New England Journal of Medicine】にて掲載されましたARCH Studyを紹介しました。重症骨粗鬆症患者さんに対して『最初から3年間ず~っと ビスフォスフォネート製剤』群と『最初1年間だけロモソズマブ➡2年目からビスフォスフォネート製剤交代』群に分けて腰椎骨密度 大腿骨の骨密度を比較しますと…
  
腰椎骨密度13.7% vs 5.0% 大腿骨近位部6.2% vs 2.8%とダブルスコア以上の大差(◎_◎;)でロモソズマブ先発群が1年目の時点で圧倒的有意に骨密度が増加! アレンドロネートの効果もあり2年目3年目で徐々に差は詰まってはきますが、1年目の差が埋まる事はありませんでした。骨形成マーカーでありますP1NPと骨吸収マーカーでありますβCTXもアレンドレネート投与群と比較しますと1年目のロモソズマブ投与時は骨形成作用を示すP1NPがしっかり上昇。その後緩やかに低下し、骨吸収マーカーのβCTXは最初から緩徐に低下。アレンドロネートの様に一気に骨代謝を抑制せず、骨形成相と骨吸収相の両面に働いている事を示しています。しかし…この文献での副作用の報告では統計的には有意差はないもののアレンドロネート群(☆)ロモソズマブ群(☆)では心血管イベントが0.3~1.0% vs 0.8~1.5%、脳血管イベントが0.3~1.3% vs 0.8~2.2%とロモソズマブ群が多い傾向に(-_-メ)。
  
この結果からロモソズマブ(イベ二ティ®)の薬剤添付文書には『本剤投与にて虚血性疾患と脳血管障害の発現がアレンドロネートと比して高い傾向にありリスクとベネフィットを考慮する事』…と患者さんにとってチョイと怖い(◎_◎;)文章が書かれています。スクレロスチンは元々は血管のカルシウム沈着の制御に関わっているのでは?と考えられており➡抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ)投与➡血清スクレロスチン低下➡カルシウム沈着の阻害を抑制➡心血管 脳血管障害の発症率が上昇するのでは?と文献では考察されています。
 
しか~し!!遺伝性疾患でvan Buchem's病(全身性皮質性骨硬化症)と言われる疾患では先天的に遺伝子異常によりスクレロスチンの生合成が阻害され全身の骨が増殖し体中に石灰沈着を起こす病気ですが、スクレロスチンが全く働かなくても心血管 脳血管だけはカルシウムの沈着を来さなかった(スクレロスチンのノックアウトマウスも同様の結果に)事が報告されています。又体外へのリンの排泄ができず血管へのカルシウム沈着を最も生じやすい透析患者さんに於いてもスクレロスチンの血清濃度が高いほど大動脈の石灰化が有意に高かったと全く逆の結果を報告しており、スクレロスチン抑制=血管のカルシウム沈着とは断言できない現状でもあります。もう一つ重要な事として…
  
ビスフォスフォネート製剤そのものが強力な骨吸収を抑制作用として骨からのカルシウムとリンの動員を強力に抑制➡血管のカルシウム沈着を抑制➡心血管 脳血管イベントを抑制するという予防効果以前から知られており、元々血管イベントを抑制するビスフォスフォネートと予防効果を有さないロモソズマブと比較すれば血管イベントの差が出る事は至極自然な事…ロモソズマブが心血管、脳血管に対して悪さをしたのでは無く、ビスフォス剤が心血管 脳血管に良い事をしたという表現が適切かと思われます。
   
骨折寝たきりの危機迫りくる状況に対し、(2005年の阪神タイガースが優勝した時の藤川球児投手がノーアウト満塁から3者連続三振に例え)一発逆転、骨密度を一気に底上げする薬剤として紹介。重症低骨密度 易骨折性状態の患者さんには短期骨密度底上げ効果の観点から早期の段階でロモソズマブを投与する事が重要とお話しました。
   
骨質改善にSERM➡ビタミンD製剤➡骨吸収亢進状態に対し ビスフォスフォネート製剤➡重症骨粗鬆症で椎体骨折予防のセットアッパー テリパラチド➡最後の絶対的守護神のデノスマブという平成の投手リレーに新星のロモソズマブが加わり、先発ロモソズマブ、前回の講演でお話しましたセットアッパーロモソズマブとしての抗スクレロスチン抗体の使いどころと各薬剤の効果持続年数を考慮した令和の投手リレーの理想像(私見イッパイですが…(^ ^;))お話しました。また守護神とセットアッパーが入れ替わる弊害について権威ある医学雑誌Lancetに掲載された『Swith Study』について報告。
  
テリパラチドとデノスマブの同時併用が最も有効ですが、野球のルール(医療保険)上はピッチャーマウンドに2人の投手を同時に投げさせる事が出来ない為 ①『テリパラチド➡デノスマブ』か②『デノスマブ➡テリパラチド』の2つの継投方法を比較しますと…②の継投方法ですとデノスマブ休止後のリバウンド現象とテリパラチドの大腿皮質骨の増加が認められない事から、腰椎骨密度は併用群と①群と比較して何とか追いつくも大腿骨は近位部頚部とも骨密度の差が出てしまう事を報告しました。
  
テリパラチドは海綿骨(腰椎)への骨密度増加効果は抜群でありますが、骨芽細胞の活性化と共に破骨細胞も活性化する為 骨表面の窪み(多孔性が亢進)が出現する事から皮質骨(大腿骨)の骨密度は減少してしまいます。テリパラチドに因る多孔性の亢進にて皮質骨(大腿骨)は脆弱化するイメージが湧きますが…しか~し!アミノ酸84鎖を持つ副甲状腺ホルモンとは異なるアミノ酸34鎖の副甲状腺ホルモン(遺伝子組み換えテリパラチド)は多孔性はあっても深く窪みが出来ない➡皮質骨幅が減少しない➡骨強度は低下しないと報告されています。テリパラチド投与中に大腿骨の骨密度が減少しても、骨折率が上昇しないのはビスフォス製剤と変わらないくらい骨強度が維持できている事がその根拠であると解説しました。

続いて『後編』へ…

2019-07-18 14:02:00

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