医療法人 東永内科リウマチ科

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...OSAKA Osteoporosis Conferenceにて講演して参りました!(後編)

...OSAKA Osteoporosis Conferenceにて講演して参りました!(後編)

前編の続きとしましては経口剤と比して大腿骨の骨密度の増加効果が大いに望める2つの抗体製剤デノスマブとロモソズマブのレビューの文献も含めて使いどころを当院の症例を通して紹介しました。83歳女性で圧迫骨折後の治療介入を他院にて行うも…除痛効果と新規椎体骨折予防の特効薬テリパラチドが副作用で使用できず、経口のビス剤も同じく消化器症状で服用できず…。
  
副作用が出易い患者さんであるも、かなりの腰椎 大腿骨の超低骨密度状態に加え…脊椎多発骨折の病状に対して如何に治療するか?ホルモン剤や低分子化合物の内服薬と比して投与時の副作用の少ない高分子の抗体製剤(低分子化合物の様に臓器に蓄積することなく、同剤は分解され体内のアミノ酸の一部として再利用される)を如何に使用するかを御話ししました。
  
本患者さんの様に他剤で副作用が出現しやすい場合は抗体製剤の適応となり、平成31年までであれば抗RANKL抗体であります『デノスマブ』が選択肢となります。現在の骨粗鬆症の治療の中で10年以上骨密度が増加し続ける事が可能で最良のクローザーではありますが、突然の休薬と後療法を行わない場合に凄い勢いで(◎_◎;)骨密度が減少(投与前以下まで減少)てしまう事からよっぽどではない限りはほぼ終生継続投与が望ましいとされますが…上記薬剤の特性について主治医から全く説明を受けていない状況で治療を受けている患者さんがおられる事に大変驚く(◎_◎;)事があります。
  
デノスマブは長期に渡り活躍可能な大変良い薬ですが、問題点としては効果の出現に半年単位で時間を要する事が挙げられます。一昨年の骨粗鬆症学会に当院から発表した自験例を提示し、本患者さんの様な 殆ど骨粗鬆症の治療を受けていないプラス重症骨粗鬆病態にデノスマブを投与しても3回投与までは(1年から1年半までは)椎体骨折の進行してしまう例が30%以上(◎_◎;)に認められた事を報告。デノスマブに問題があるのでは無く、無治療重症患者さんの診断と治療介入が遅れた事が大変が問題であるとお話ししました。
  
骨粗鬆症の抗体製剤『抗RANKL抗体 抗スクレロスチン抗体』特集(レビュー)の文献の中からデノスマブの長期有用性の論文は10本以上とかなり多く出ており、一方でロモソズマブは未だ新しいため3本ほど報告あり。これらの文献をグラフに表しますとデノスマブは長期に於いて安定して骨密度の増加効果を認めるもやはり最初の1年目から効果の出現が緩徐であります。一方でロモソズマブは1年間の短期決戦型ですので、1年目のベクトルがかなり上向きであり、デノスマブと比較し超短期間で効果が出ていると言えます。
  
単純に比較するものではありませんが、ロモソズマブが腰椎骨密度を1年で13.7%増加させるのに対しデノスマブが同量を増やす為には5年超かかり、ロモソズマブが1年間で大腿骨近位部を6.7%、頚部を5.2%を増やすのに対しデノスマブが同量を増やすためには同じく5年から6年掛かる事を考慮しますと、高齢者だからと言っていきなりデノスマブを投与するよりも、しっかりロモソズマブで1年間底上げしてからデノスマブを使用する方が骨折率を遥かに軽減させるのではと考えられます。
  
それを示したのがこれまた権威ある医学論文『New England Journal of Medicine』にて掲載されましたFRAME Study+FRAME Extention Studyであります。1年目にプラセボのイベニティー®ならぬイコニティー®を1年使用しその後デノスマブを1年投与する群1年目にロモソズマブを投与しその後1年デノスマブを投与する群との骨密度と副作用を調査した論文です。さらに両群1年さらに追加でデノスマブを投与した調査がExtention Studyであります。
  
1年無治療で経過観察してその後にデノスマブを投与しても、当院の自験例と全く同じで 直ぐには骨密度は増加せず、一方でロモソズマブ➡デノスマブの継投を行うとたったの1年で腰椎17.6% vs 5% 大腿骨近位部8.8% vs 2.9% 大腿骨頚部で6.6% vs 0.6%と圧倒的な大差が出てしまいました(◎_◎;)1年の治療の遅れと薬剤の選択の違いでこれ程まで治療成績が変わってしまう驚きよりも、治療を怠る事で患者さんへ不利益を招く(-_-;)事に不安を覚えます。
 
骨密度増加効果だけでなく、当然骨折予防率も圧倒的有意差を以ってでロモソズマブ➡デノスマブの継投群が上回りました。アレンドロネートとの比較試験(ARCH Study)で心配されたロモソズマブの心血管イベントの副作用の出現頻度はプレセボ群と比べて有意差は認めず、ロモソズマブが心血管 脳血管に悪さはしなかったと証明される結果となりました。
  
FRAME試験の延長として、両群1年追加でデノスマブを投与し調査したExtention Studyに於いても圧倒的な有意差は変わらず、3年経過しても骨密度の増加効果 骨折抑制率の差はやはり埋まるどころかより開いてしまう結果(◎_◎;)となりました。如何に重症骨粗鬆症患者さんを早期に発見し、絶対的守護神のデノスマブの投与前にスーパーセットアッパーのロモソズマブを早期に導入する事が如何に重要かを知らしめる文献でありました。
 
骨折に伴う入院費用や、その後の家族の日常生活に於ける介護負担に加えて 介護へ専念する為に家族が離職や失職を含めた経済的損失も相当な額とされ、ロモソズマブの薬剤費は決して安いとは言えませんが、予防を怠った骨折のその後に掛かる膨大な入院費用や介護費用、介護者の経済的損失を考えますと、決して予防的な治療費としては高額とは言えないかと思われます。まとめをお話し、かなりハイペースで講演を行うも30分ジャストで終了できず4分オーバーとなってしまいました<(_ _)>。
  
講演の終了後は『デノスマブ投与中から休薬してロモソズマブの使用は可能か』の御質問を頂き、現在文献の報告はないが、RANK/RANKLの結合阻害➡強力な骨吸収抑制➡骨代謝抑制➡骨形成抑制状態にスクレロスチンを抑制し骨密度増加効果を期待するよりも、RANK/RANKL結合阻止解除➡急激な骨吸収亢進➡短期的に骨密度低下するリスクが上回る可能性…スクレロスチンを抑制するとされているテリパラチドをデノスマブ投与後に使用し大腿骨の骨密度が低下した文献『Denosumab and teriparatide transitions in postmenopausal osteoporosis (the DATA-Switch study)』…を元にデノスマブ休薬は御勧めできないとお答えしました。

講演時間を超過してしまいましたが、座長の佐藤敦先生が色々と調整してくださいました。講演の機会を頂きました先生方 メーカー様に深謝いたします。ありがとうございました<(_ _)>。

2019-07-17 08:19:00

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