医療法人 東永内科リウマチ科

大阪市東淀川区の 内科,リウマチ科(リウマチ,膠原病,骨粗鬆症)
医療法人 東永内科リウマチ科

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リウマチのお話その3


 
【生体の免疫システムとリウマチ薬物療法の原理と手術療法】

前回は続編『リウマチ治療と時代の変遷』の内容で、総論的な関節リウマチ治療の10年での大革新的進歩のお話と薬物治療における問題点をお話しました。
今回は当院が最も専門とする『免疫学』その中でもちょっと難しいですが、    免疫細胞と免疫システムのお話と、リウマチ薬物治療の原理手術治療について、イラストを交えてわかり易く解説します。

 

はじめに

早期発見、早期治療開始にて、関節リウマチは寛解だけでは無く、治療薬を中止しても悪化しないで治癒する患者さんも見られるようになりました。新薬の開発だけでなく、前回御紹介したリウマチ治療の疫学、統計学の進歩に専門医の育成も大きく治療に寄与してきました。今回は3編目として免疫細胞や免疫システムのお話、それに応じたリウマチ薬物治療の原理と、関節機能障害を回復するための外科的手術についてのお話です。

リウマチ治療の根本はとは?
関節リウマチ治療の基本的アプローチ

リウマチ治療の根本はとは?

ステロイドホルモン、消炎鎮痛剤に因る『炎症と痛みをとる治療』、メソトレキセレートリマチル®、アザルフィジン®、プログラフ®等の免疫抑制剤生物学的製剤による『病気の進行、炎症細胞の活動性を抑制する治療』、手術に因って失われた機能を回復する治療法』の3つに分類されます。
最も重要なのは炎症細胞の活動性を抑制する事!!
ここで登場する炎症細胞とは?炎症細胞=免疫細胞=白血球には主に、細菌と戦う好中球と、リウマチ本態に深く関係する、リンパ球(T細胞B細胞)、マクロファージ細胞(樹状細胞に分類されます。見張り役のマクロファージが、T細胞リンパ球に情報を伝達し、T細胞が今度はB細胞リンパ球に攻撃指令(免疫サイトカイン)を出して、例えるとミサイルの様な武器(免疫抗体)をB細胞リンパ球に産生させます。これが免疫の基礎であります。

免疫システムに働く白血球の仲間たち

そこで・・・、ちょっと難しいですが見張り役(情報伝達屋=通称 抗原提示細胞)であるマクロファージ樹状細胞が、ウイルスや病原体を細胞内に取り混み、人体の異物と認識。司令塔のヘルパーTリンパ球細胞にくっついて敵の情報(ウイルスや病原体の情報)を伝達します。


抗原提示細胞(DC)により情報伝達された司令塔のヘルパーT細胞リンパ球は、増援部隊であるB細胞リンパ球攻撃指令を出して抗体という武器を沢山産生させ病原体を破壊し、異物の毒性を中和させ免疫を安定化させます。


司令塔ヘルパーT細胞は、今度はもう一つの実行部隊キラーTリンパ細胞に対し免疫指令を出して異物(病原体)への直接攻撃や破壊する様に働きかけます。これが正常の免疫システムです。

ところがリウマチになると・・・

ここで登場する、樹状細胞が滑膜細胞を敵と認識し、司令塔のヘルパーT細胞誤った情報を伝達し、③ヘルパーT細胞が増援部隊のBリンパ細胞に抗CCP抗体を用いて関節や滑膜細胞への攻撃指令を出します




①~④の全体的に炎症や免疫細胞の機能を抑制するステロイド剤(プレドニゾロン®)②樹状細胞からヘルパー細胞への情報伝達を遮断するのがバイオ製剤のアバタセプトオレンシア®)、③の司令塔であるヘルパーT細胞の働きの抑制、B細胞の抗CCP抗体産生抑制実行部隊キラーTリンパ細胞の攻撃の抑制をするのがメトレート® アザルフィジン® リマチル® プログラフ®です。これらの薬剤を併用する事で、リウマチを引き起こす異常な免疫細胞を強く抑制し、現在の関節リウマチ薬物治療の主流と言えます。最新医療では破骨細胞を攻撃する標的治療薬デノスマブ(プラリア®)が登場し骨粗鬆症薬の最新治療薬であり関節リウマチにも威力を発揮します。
詳細は骨粗鬆症総集編その3を御参照下さい。


薬物治療

免疫全体が暴走すると特に狂暴化した司令官ヘルパーT細胞から免疫過剰物質③TNF‐α:腫瘍壊死因子IL-6:インターロイキン6が放出され、Bリンパ細胞に抗体を大量に産生し関節を攻撃するよう命令が下り、またキラーTリンパ細胞にどんどん関節を破壊する様、命令が下ります。これらTNF‐αを抑制する生物学製剤がインフリキシマブ(レミケード®)、エタナルセプト(エンブレル®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)、ゴリムマブ(シンポニ―®)、セルトリズマブぺゴール(シムジア®)であり、IL-6を抑制するのがトシリツマブ(アクテムラ®)です。関節リウマチの病態に対し絶大な治療効果を発揮します。また上記のアバタセプトオレンシア®と共に現在本邦では7種類の生物学製剤が使用可能となっています

原因

*** TNF (腫瘍壊死因子])IL-6(インターロイキン6)IFN(インターフェロン)は免疫機能や炎症反応に関係するサイトカイン(活性因子)と呼ばれる物質の一種で、関節リウマチの炎症や痛み・腫れ、そして骨や軟骨などの関節破壊を引き起こす代表的な物質です。関節リウマチの患者さんの関節内では、TNFやIL-6が過剰に作られていることがわかっています。 ***

現在日本国内で使用されている生物学製剤
薬剤名 一般名 治療の標的 投与法 投与間隔
レミケード® インフリキシマブ TNF(腫瘍障害因子) 点滴 初回は2週→6週→8週毎
エンブレル® エタネルセプト TNF(腫瘍障害因子)受容体 皮下注射 1週間に1~2回
ヒュミラ® アダリムマブ TNF(腫瘍障害因子) 皮下注射 2週毎
アクテムラ® トシリズマブ IL-6(インターロイキン6) 点滴又は皮下注射 4週毎(皮下注射は2週毎)
オレンシア® アバタセプト 抗原提示細胞 点滴又は皮下注射 点滴4週毎、皮下注週1回
シンポニ―® ゴリムマブ TNF(腫瘍障害因子) 皮下注射 4週毎
シムジア® セルトリズマブぺゴール TNF(腫瘍障害因子) 皮下注射 2週毎


関節破壊の改善効果(エタネルセプト)

前号でご紹介した通り、生物学製剤は病気の進行を抑制するだけでなく、関節破壊を復元する効果をもたらします。やはり問題点は、前号に挙げた様に正常免疫機能を抑制する事による感染症が最も重要となります。

免疫機能

強い免疫抑制剤や、生物学製剤は肺炎等の感染症の頻度が高いと思われがちです。しかし実際は、関節リウマチ患者さんが肺炎で入院するリスクを、メソトレキセレートを1として薬剤別に表すと、肺炎に関しては、実はステロイドの方が生物学的製剤よりもリスクが高いという結果になりました。

肺炎による入院のリスク

(1)感染症:5mg程度の少量でも、少しだけ感染症にかかりやすくなると言われます。量が増えれば増えるだけリスクが増大しますので、出来るだけ少量のステロイドになるように(可能であれば中止できる様に)他の免疫抑制剤などを併用します。
薬物治療の進歩に伴い、『失われた機能を手術に因って回復する治療法減少しつつありますが、活動性の高い、変形を伴う関節リウマチに対して、下記の様な外科的治療が行われています。

関節リウマチの外科療法

薬の効薬物治療に効果が得られず変形した関節や、それに伴い腱断裂に対して、上記の外科治療が行われました。薬物治療の効果が不十分な時代では関節変形が強く生じる事が多く、外科手術も大掛かりな物が多く、関節固定術関節形成術が中心となりました。

関節固定術や関節形成術

関節固定術や関節形成術
膝関節や股関節などの大関節から手指の小関節まで人工関節置換術を行います。

関節固定術や関節形成術

関節変形と腫脹に因って指の腱が断裂して指が伸びなくなった状態→最近の手術治療の主流増殖した滑膜を切除し、他の腱の一部を移植して断裂した腱を縫い合わせます。最近では滑膜を切除する事で腫れや痛みが軽減し薬を減らす事が出来る事がしばしばあります。

滑膜

関節リウマチの診断と治療の変遷、免疫システムの混乱とそれに伴う治療の原理について3回に渡って解説して参りました。我々内科系リウマチ専門医としては、
(1)可能な限り早期に関節リウマチを診断し、早期に治療に介入する事。
(2)治療は可能な限りステロイド頼らない薬物治療、経済性を重視した生物学製剤をなるべく使用しない治療、外科手術に至らない内科的治療で、早期完全寛解安定化を目指します。
(3)外科治療の機会を逸しないタイミングでの整形外科医へのコンサルトする事。

患者さんの診療

これらを念頭に当院では関節リウマチの患者さんの診療に当たっております。今後も最新の関節リウマチの情報提供治療の実践、日々安心、安全に過ごして頂ける様努力して参ります。

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文責 リウマチ科 兪 炳碩