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その2はステロイド骨粗鬆症のお話。
その2は骨粗鬆症の診断と最新のステロイド性骨粗鬆症についてのお話です。
骨粗しょう症と言っても薬を飲まなくて良い軽症から、寝たきりの恐れのある重症まで、具体的な病状の違いは??診断方法とは?? ステロイド骨粗鬆症の現状と、2014年4月に策定されたばかりの最新版のステロイド骨粗鬆症の診断ガイドラインと併せてご紹介します。
骨粗鬆症の診断の前に骨粗鬆症の原因を知るのが重要です。最も多いのが加齢性に因る、原発性骨粗鬆症です。女性の骨密度は18歳くらいでピークに達します。そののち40歳代半ばまでは、ほぼ一定ですが50歳前後から急速に低下していきます。
原因となる病気などがなく、加齢や閉経にともなって引き起こされる骨粗しょう症です。 男性にもみられますが、閉経による女性ホルモンの分泌低下が骨密度を低下させるため、特に女性に多くなります。50歳前後から急速に低下していきます。骨をつくるのに必要なカルシウムは、腸から吸収されても骨に運ばれる量が減加齢と共に減少します。前号でもお話した、遺伝的要因や体重減少、栄養不良、体を動かさずに過ごすといった生活習慣も、原発性骨粗しょう症の発症に大きく関係していることが分かっています。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨の新陳代謝に際して骨吸収をゆるやかにして骨からカルシウムが溶けだすのを抑制する働きがあります。閉経後、エストロゲンが減ってしまいますと、骨吸収のスピードが速まるため、骨形成が追いつけずに骨がもろくなってしまうのです。
女性の場合は、閉経期を迎えると、同年代の男性に比べて骨密度が低くなります。骨粗しょう症の患者さんの80%以上が女性といわれていますので特に女性では注意が必要な病気といえます。
特定の病気や、服用している薬が原因となって骨強度が低下する骨粗しょう症です。 原因となる病気としては、副甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、関節リウマチのほか、動脈硬化や慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病などの生活習慣病で頻度が高いとされています。これらの病気、特に糖尿病、骨代謝に影響を及ぼすホルモン(リウマチ膠原病に対するステロイドホルモン剤、前立腺がんに対する抗男性ホルモン剤⇒抗テストステロン剤使用など)の増加または不足に因り、骨の中の骨柱=骨架橋(こつかきょう)となる丈夫な鉄柱=善玉骨コラーゲンが減少。逆に骨を劣化させる錆びた
鉄柱=悪玉骨コラーゲン(ペントシジンと言います) が増えてしまい、骨が脆(もろ)くなります。生活習慣病関連骨粗しょう症で、骨密度が正常に保たれているケースでも骨折を生じやすいのは、上述の通り骨柱=鉄柱の劣化の関与が大きいと考えられています。
骨の頑丈さは、骨密度(コンクリート)70%で、残りの30%は鉄筋の骨柱(骨かきょう=骨コラーゲン)と言われています。依って
骨密度が十分あるからと言って、安心はできません!!
骨粗しょう症の治療の前に、上記の様に原発性骨粗しょう症か、続発性骨粗しょう症かを診断。
続発性の場合は、骨粗しょう症の治療に加えて、副甲状腺機能亢進症、関節リウマチ、腎臓病、慢性肺疾患、糖尿病等の治療が優先となります。ステロイド性骨粗鬆症は可能な限りステロイドの減量、ステロイド代替薬への変更が望まれます。当院の専門疾患である関節リウマチでは日本全国のリウマチ患者さんの内、なんと60%もステロイドを服用していると言われています。
骨密度の測定 骨密度とは、骨の強さを判定するための尺度の1つです。骨密度の測定法には次のようなものがあります。当院では手の骨で測定するMD法を採用しています。
DEXA(デキサ)法 (キリスト教病院) |
超音波法 (音波に因る測定) |
MD(エムディ)法 (当院採用) |
DEXA(デキサ)法検査
腰椎、大腿骨DEXA法が最も信用度、精密度が高いと言われています。治療判定にも大変有効です。しかし大掛かりな検査装置で、淀川キリスト教病院の様な大きな医療施設でないと測定できません。また検査時間が15分~20分掛かるのが難点です。
超音波法
最も簡便なのは超音波法で放射線を使用せず、大変安価(1割負担で80円)です。診断や治療効果判定にも比較的有用でありますが、骨密度の結果に大変誤差が多い(骨密度として5%前後も)のが難点です。
MD(エムディ法)
当院で採用している検査法です。手の付け根の骨(中手骨)で定量する為簡易で、骨粗鬆症の診断の正確度は高く、誤差も少ないです。しかし中手骨は骨成分の中で皮質骨部分が多い為、治療効果判定の正確さに欠けるのが難点です。
血液検査・尿検査
骨を弱らせる破骨細胞の働きを調べるのが骨吸収マーカー(TRACP-5b)、骨を強くする骨芽細胞の働きを調べるのが骨形成マーカー(BAP)です。これらを測定する事で治療効果が判定できます。投薬中でも骨吸収マーカーが高すぎると、破骨細胞の働きが強すぎて骨芽細胞の働きが追いつかず、薬が効いていない状態であることがわかります。胸椎、腰椎のレントゲン検査
なんと!圧迫骨折の30~40%は本人が気付かず、自覚症状の無い間に骨折をしています。背骨腰骨のレントゲンを撮って初めて重症骨粗鬆症の診断がなされる事もしばしばあります。背丈が縮む、背中が曲がってきた等は要注意と言えます。
診断の決め手となるのは、『骨密度』と『骨のもろさ』、転倒やちょっとした衝撃で骨折する「脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折」があるかどうかの3つです。脆弱性骨折には、本人が自覚していない間に生じる骨折もあり、診断のためには腰のレントゲン検査等が必要となります。 骨粗鬆症としてもっとも広く使われるのが上述の骨密度検査です。
骨密度の診断基準と飲み薬開始の目安
骨密度の正常値は、成人(20~44歳)の基準値をもとにしています
基準の80%以上:正常(*ぜい弱骨折があれば骨の薬開始*)
70~80%:骨量減少=要注意(*お酒過量、タバコ、家族歴あれば骨の薬開始*)
70%未満 :骨粗しょう症 ⇒症状に関係なく、骨の薬の開始を推奨
世界保健機構が、パソコンのインターネットを通して自宅で出来る骨粗鬆症予測診断ツールです。年齢や、体重、家族歴や喫煙、アルコール摂取量を入力する事で簡単に骨粗鬆症診断ができます。
これらの計算にて 10年間での骨折を起こす危険率を表します。当院でも簡単にできます。
①Major osteoporotic ⇒ 骨粗鬆症骨折:脊椎、前腕、股関節部あるいは肩の骨折危険率
②Hip fracture ⇒ 寝たきりの原因となる大腿骨、骨盤骨折の危険率
①では15%以上、②は5%以上で薬の開始の目安と言われています。
薬を開始するのも、重症患者さんの場合は飲み薬だけでなく強力な注射が必要となります。
では骨粗鬆症の重症の定義は??
①骨密度=骨量70%以下+ 1個以上の脆弱性(ぜいじゃく)骨折がある人。
②腰椎骨密度=腰の骨量60%以下+2個以上の背骨の圧迫骨折のある
*骨量が少ない上に★の様な、ぜい弱の骨折歴のある人は、寝たきり予防治療が急務と言えます。
ここでステロイド性骨粗鬆症のお話
ステロイド骨粗鬆症は、ステロイドに因る破骨細胞の活性化と、より強く骨細胞と骨芽細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導⇒骨形成能低下に至り、骨粗鬆症を発症すると言われています。
当院での専門疾患であるリウマチ 膠原病、呼吸器では気管支喘息、眼科ではぶどう膜炎 原田病 皮膚科ではアトピー性皮膚炎、消化器疾患では潰瘍性大腸炎 クローン病、腎臓疾患ではネフローゼ症候群、血液疾患では悪性リンパ腫、内分泌疾患では甲状腺機能亢進症と各科で幅広く使用されるステロイドホルモンですが、通常の骨粗鬆症と比較して骨折率が高い事が問題と言われています。
現在日本にステロイド性骨粗鬆症患者さんは200万人と言われ、通常の骨粗鬆症にと比較して脊椎骨折が大変多いと言われています。最近のイギリスのデータでは、ステロイドの副作用の1位が骨折で、一般人とステロイド内服患者さんの腰椎骨折率は1年で(ステロイド無しVS有り)1.5% VS 20%、3年で5% VS 38%とステロイドの内服期間が長期に渡るに従い、骨折率が上昇します。
またステロイド(PSL=プレドニゾロン換算)1日内服量に依存して骨折危険度は上昇します。特に1日内服量が20mgを超えると格段に骨折率が上昇します。ステロイド投与量の案全域は存在せず、7.5mg/日のステロイドで骨折率3.75倍 5mg/日2.6倍 僅かな2mg/日の少量でも1.5倍と骨折率が増加します。
ステロイドは骨量だけで無く、骨質の低下(悪玉骨架橋の増加)するのも問題視され、骨量が比較的に保たれても、前述した骨架橋がもろくなる事により骨折率が高くなると言われていています。
ステロイド骨粗鬆症の診断基準では5mg/日以上でリスクあり 7.5mg/日でリスク大として、下記の様にスコア化して合算にて診断と治療適応に至ります。(2014年4月の最新版)
☆骨折が無くても ステロイド7.5mg以上 少量内服中でも65歳以上で薬の適応となり、50歳~65歳でも骨密度80%未満(一般の骨粗鬆症よりも骨量が10%厳しく設定)で薬の適応となります。
①骨粗しょう症の予見、予防の為に早めに骨量検査やFRAX検査を受けましょう!
②骨粗鬆症の診断がついた人は続発性か原発性かをきちんと知りましょう!
③続発性の場合な元の病気の状態を知り、骨粗鬆症と両方の治療をしましょう!
④骨量が十分にあっても糖尿病など生活習慣病の人は安心せず 食事運動療法を!
⑤重症骨粗しょう症の患者さんは主治医と相談して適切な治療で予防しましょう!
⑥ステロイドにて治療中の患者さんは可能な限りステロイドの減量をしましょう!