医療法人 東永内科リウマチ科

大阪市東淀川区の 内科,リウマチ科(リウマチ,膠原病,骨粗鬆症)
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...第19回 日本骨粗鬆症学会に参加 発表して参りました!(聴講編)

骨粗鬆症に対する注目度が年々上がるにつれて、日本骨粗鬆症学会の会員数、学会参加数、演題登録数がドンドン増えております。今回は大阪の開催でしたが、近場の開催の為反って休診に出来ず聴講できた講演も限られてしまいました。まず聴講したのは長崎大学ダイバーシティ推進センターの伊東昌子先生『最新型HR-pQCT検査』のお話です。

本邦で多用されるDEXA法を用いた2重X線検査でも2次元的な評価が出来ず、骨密度が正常であっても骨質の悪いステロイド骨粗鬆症や生活習慣病 COPD(慢性呼吸器疾患)糖尿病から見られる微細な骨構造の異常を評価できませんでした。これを3次元的にコンピューター解析して骨粗鬆症の病態を評価できるのがHR-pQCTなのです(^_^)/。
 
ウルトラコンピューター解析で具に骨構造が解ります(@_@)。しか~し日本で長崎と東京の2台しかなく、1台3億円(◎_◎;)と非常に高額で、なかなか実用化難しそうです。リウマチ医療も格段に進歩しておりますが、画像検査の進歩の凄まじさを感じました(>_<)。

続い島根大学医学部内科学第一講座教授 杉本 利嗣先生『高齢骨粗鬆症の併存疾患を考慮した治療戦略』...以前に同様の内容をまとめたものを再掲載しますと…



続きましては東京大学医学部整形外科教授の田中栄先生『新規治療薬の登場に伴う骨粗鬆症診療戦略の変遷と最近の考え方』について聴講して参りました。こちらは新薬として本年認可されましたゾレドロン酸のお話と…。

新薬として期待される、デノスマブと同様の働きを持つ骨吸収抑制作用を有するも骨形成作用は抑制しないカプテシンK阻害剤オダナカチブ骨芽細胞の働きに重要なWitシグナルを邪魔するスクレロチンに対してさらにこれを邪魔する抗スクレロチン抗体ロモソズマブ骨芽細胞を活性化させ現在本邦でも使用されているテリパラチドよりも更に強力副甲状腺ホルモン遺伝子組み換え製剤アバロパラタイドの効能のと長所短所について詳しく解説して頂けました。

それぞれの作用機序を色分けして記しておりますが、カプテシンK阻害剤オダナカチブ抗スクレロチン抗体ロモソズマブ副甲状腺ホルモン遺伝子組み換え製剤アバロパラタイド…これからも新薬が続々と登場効果を期待したところですが、やはり未知の副作用も存在する為使用する場合は慎重に帰するといえます。

最後の本会の会長であります、
大阪市立大学医学研究科 内分泌代謝内科学講座 教授の稲葉雅章先生から『骨粗鬆症診療のなかで日本骨粗鬆症学会認定医に期待される役割』についてのお話がありました。

現在大阪府下での骨粗鬆症検診の充実化を求め『大阪骨粗鬆症検診を考える会』が設立されました。私も日本骨粗鬆症学会認定医として少しでお検診の充実にお役立てできます様頑張ります(^_^)/。
 

...関節リウマチに使用可能となりましたデノスマブ総集編をレポートします!

7月26日(水)に『関節リウマチの新たな治療戦略』として北海道大学の渥美達也先生の講演を聴講して参りました(^_^)/。関節リウマチに当院イチオシのデノスマブが使用可能となりその総集編を聴講して参りました!

非リウマチ専門医の先生方も多くおられた事より、まずは基礎的なお話からしてくださいました。関節リウマチの骨びらんと骨密度の低下を伴う病気であり、全身の骨密度と共に局所的な骨密度も低下する病態である。DKK1を介してスクレロチンを抑制する事で骨芽細胞も抑制し骨形成の低下にも作用します(既にマニアックですが(-_-;)…。)

 

関節リウマチの大敵である抗CCP抗体はオステオクラスト細胞(破骨細胞)を誘導し骨破壊にも関与すると言われています。CD14細胞から破骨細胞に分化誘導された単球に抗CCP抗体を付加して培養すると破骨細胞の誘導性が増し、IL-8抗体を付加すると寧ろその誘導性が減少したといった文献を紹介して頂きました。教科書的にはIL-6 TNF IL-17は破骨細胞の誘導を促進するRANKLを介したパスウエィが最も破骨細胞が活性化します。そこで、骨粗鬆症の特効薬である抗RANKL抗体であるデノスマブが関節リウマチにも効果があるのでは…と言う事で


日本独自の多施設臨床試験DRIVE Studyが 一昨年に公表されました。350人の6か月から5年の関節リウマチ既往患者さんを①対象群 ②デノスマブ60㎎を年2回投与群 ③年4回投与群 ④年6回投与群の4群に分けて臨床試験を開始。
 
結果は有意にデノスマブ投与群が骨糜爛の進行と、骨破壊の進行を抑制しました(^_^)/。関節軟骨の浸食は残念ながら有意差は出なかったようです。骨破壊、骨糜爛の予防だけではなく下記の結果の如く腰椎(左グラフ)並びに大腿骨(右グラフ)骨密度も同時に増加!骨粗鬆症の予防効果も存分に発揮しました。③群の4回投与と④群の6回投与との有意差は無い事より、デノスマブの年4回投与がこの論文から保険収載となりました(^_^)/。


他のバイオ製剤と比較しても各段に安く、当院でも多くの原発性骨粗鬆症患者さんにデノスマブを投与しておりますが、それ以上の結果が出たと言えそうです(^_^)/。又慶応義塾大学の竹内勤教授の研究グループの発表によりますと生物学製剤の単剤投与群と生物学製剤+デノスマブ併用群と比較しますと…


こちらも生物学製剤+デノスマブ投与併用群が骨糜爛の進行と、骨破壊の進行を抑制しました(^_^)/。生物学製剤同士を併用すると過剰な免疫抑制の観点から重度の感染症等 重篤な副作用が出ますので併用は禁忌ですが、デノスマブは破骨細胞の誘導因子であるRANKLのみを抑制するので生物学製剤と併用しても重篤な感染症等は発症しません。⇒逆を言えば、デノスマブ単独ではリウマチの活動性の制御はできないといえます。管理としては腎機能と血清Ca値は原発性骨粗鬆症と同様、正確な評価とモニターが絶対必須と言えます。

と、言う事で値段も安いし、そこそこ安全やし、よ~効くし、予防効果も抜群やん!関節エコーで骨びらんを認める患者さんに全例投与!!…といった感じですが…私が心配する点が一つあります(-_-;)


生物学(バイオ)製剤を使用中にリウマチの病状が安定すればバイオフリーとして生物学製剤を休薬しますが、デノスマブを休薬するとどうなるでしょうか?DEFFEND Studyと言う臨床試験がありますが、こちらは低骨密度の閉経後女性256例にデノスマブを2年間投与しその後全例休薬とします。その後2年のフォローをしますと…

左端から休薬により破骨細胞のオーバーシュート現象が起こり、腰椎、大腿骨、前腕骨と2年(24か月)積み上げた骨密度の増加が半年から1年の間に投与前の基準以下まで激減してしまいます。勿論対象群(偽薬使用群)と比較すれば骨密度は上回りますが、止めると確実に骨密度は低下すると言えます。

デノスマブの使用により抑制していた骨代謝マーカー(左が骨吸収マーカー右が骨形成マーカー)が休薬の24か月目を機に一気に上昇し、その半年後には投与前よりも圧倒的に高い数値までリバウンドで上昇してしまいます。中止後2年で治療開始前の数値まで低下しその後は安定しますが、休薬に因る易骨折性の危険性の上昇が大変懸念されます(本臨床試験では休薬期間中の骨折患者の増加は認めませんでした。)

            (骨粗鬆症フォーラムの講演時に私が作成したスライドです(^_^;)
現在デノスマブは10年連続投与しても問題ない薬剤とされています。長期継続する事で予防の難しい大腿骨々折を抑止する観点から70歳代後半のリウマチ患者さんに於いては長期使用しても問題はありませんが、30歳代~60歳代のリウマチ患者さんとなりますと…現状では更なる長期投与の安全性が未確認である事を考慮しますと、やはりどこかでデノスマブの休薬が必要となりそうです。

『関節リウマチの患者さんにデノスマブ休薬後の骨密度変化、骨折率の上昇』を調査した論文は無くデノスマブ休薬後も骨粗鬆症予防対策の継続は必須であり、ビスフォスフォネート剤やSERMに変更してソフトランディングする事が重要と言えます。又『デノスマブ休薬により骨糜爛が同じくリバウンドし、より進行しないのか?』についても調査した論文もやはり無くリウマチの活動性が完全に消失し深い寛解の状態にしてからデノスマブを休薬するべきではと渥美先生はお話されておりました。

最後にもう一点、関節リウマチを有するデノスマブ投与患者さんの抜歯後の骨髄炎のリスクが高いことから投与前の歯科口腔科と連携も大変重要と付け加えておられました。デノスマブは大変良い薬ですが、こられの知識を十分に習得しリウマチ患者様への十分な説明と了解の下で使用するべき薬剤と私は考えます。かなり長文になりましたが最後まで御一読ありがとうございました<m(_ _)m>。