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第24回リウマチ病診連携の会にて講演して参りました(第1編)
メソトレキセート関連リンパ増殖性疾患(以下MTX-LPD)をより深く理解し、当院で発症した患者さんの病状と経過をしっかり観察し考察を行い講演発表して参りました。発表当日の外来も連休前で大変混雑し、外来終了後直ぐに会場に向かいましたが『世話人会』は遅刻してしまいました。
予定の5分遅れで講演が開始となりました。今日はラグビーワールドカップの決勝でテレビ観戦の為?か参加される先生は少なく前回は70名近い参加が今回は20名程度のこじんまりした会となりました。まず日本リウマチ学会のMTX-LPDの見解としてリウマチ学会 血液学会 病理学会と3学会合同で精査していくとのコメントが出されています未だ2年しか経過していない事を報告。数年前まで血液専門医の先生が『驚愕』される事例が後を絶たない状態であった事もお話ししました。
本講演に於いてMTX-LPDを取り上げた理由として、当院の患者さんがMTX休薬後にリンパ腫が消退せず悪性化してしまった事と、大学病院の勤務時代は相当数の血液腫瘍の診療にあたり、難関の内科専門医試験の抄録も殆どが重症血液疾患の合併症であった事を報告としました。当院のMTX-LPDの第一例目に於いては上気道炎後に一気に右頚部リンパ節腫脹が出現し、超音波検査を施行しました所典型的な悪性リンパ腫の所見であった事を報告。
MTXを即刻休薬とし消退する事を祈っておりましたところ緩徐に縮小。引きが少し悪い状態でしたが何とか4週でほぼ消退。しかし今度は関節リウマチが相当悪化してしまい免疫抑制剤の再投与にてリンパ腫再発が懸念されます為、治療薬選択に難渋し血液専門医にコンサルト。『リウマチの治療は貴院にお任せします。生物学製剤の使用も問題ありません。リンパ腫が再燃した場合はこちらでしっかり治療します。』と心強い御言葉を頂けましたが…
基本的にMTX-LPDに生物学製剤でありますTNF阻害剤は再発のリスクが高く投与は回避すべきとされております。一方でNon-TNF製剤は安心して使用可能?なのでしょうか?その報告をしていた論文を紹介しましたがキーワードはEBウイルスでした。EBウイルスは悪性リンパ腫でありますバーキットリンパ腫の細胞の中から1964年に発見されたウイルスでヘルペスウイルスに属します(4型)。
殆どは幼少期に唾液や強い接触での飛沫感染で体内に侵入し軽い風邪症状で済みその後 終生に渡って潜伏感染を起こします。青年期から成人期に感染しますと時に重症化し有名な『伝染性単核症』を発症します。長期間の発熱や肝障害が起きますが生体内の細胞障害性Tリンパ細胞がウイルス感染細胞を撃退し潜伏感染状態に追い込みます。潜伏感染中も細胞障害性T細胞がしっかり監視しEBウイルスの増殖を制御していると考えられています。
ここで加齢性変化と免疫力の低下、メソトレキセートの免疫抑制にてEBウイルスの監視役であり細胞障害性T細胞の絶対数の減少と活性化の低下➡EBウイルスが増殖➡EBウイルスに感染しているBリンパ細胞が自らウイルスを産生する『溶解感染』が起こります。ここに更にリウマチ特有の慢性炎症と白血球の遺伝子発現等が絡み合ってリンパ腫が発生し悪性化すると言われています。元々EBウイルスと関節リウマチは切っても切れない関係で…
関節リウマチ患者さんの滑膜内にEBウイルスのDNAがしばしば検出され、またEBウイルスの核抗原の一部に対しリウマチ患者が有する抗CCP抗体が強い交差反応を示し、関節リウマチ発症にEBウイルスの感染が強く関与していると言われています。また-DNAが10倍も増加する事が報告されています。…第2編に続きます。
第24回リウマチ病診連携の会にて講演して参りました(第2編)
第1編でお話ししました関節リウマチとEBウイルスの関連について報告し、かなり横道逸れた状況から再度 MTX休薬後の関節リウマチの増悪時の安全性を重視した治療についてEBウイルスを如何に増幅させないかが重要とお話ししました。
TNF製剤が原則投与禁忌であり、3年間に渡ってNon-TNF製剤のトシリズマブとアバタセプトを3年間投与しEBウイルスのDNAの増幅度数とリンパ腫の発症について検証した論文を紹介。結果的にアバタセプトは経時的にEBウイルスを大幅に減少させなかったがトシリズマブは経時的にEBウイルス量を大幅に減少させ 90人の関節リウマチ患者に於いてトシリズマブの長期治療を行ってもリンパ腫は発症せず、RA患者の末梢単核球中のEBウイルスを増加させなかった。と結論付けておりました。
この安全性の文献を根拠に再活動性のLPD軽快関節リウマチに対してトシリズマブの投与にて著効(◎_◎;)し、また2年半経過するもリンパ腫の再発なく良好な経過を辿っている事を報告しました。第2例目として52歳女性でMTX6mgで寛解中に上気道炎を機会に多発的にリンパ節が腫脹。当初はウイルス感染由来の反応性リンパ節炎を疑うもリンパ節の可動域不良で表面が不整なかなり硬いしこりでリンパ腫のマーカーとされる可溶性IL-2受容体が高値に!
即刻でMTXを中止し、しばらく経口ステロイドホルモン剤とサラゾスルファピリジンにて粘っておりましたが…一気に関節炎が全身に波及 再燃し高活動性に加えてアキレス腱付着部炎まで併発し歩行困難な状態に。トリアムシノロンの局注療法ネタは封印の予定でしたが、歩行困難な付着部炎に局注が著効し数時間で歩行可能となったことを報告。
しかし局所療法では歯が立たず、全体の関節炎の鎮静化の為には生物学製剤の手を借りる必要がある状況に。ここでトシリズマブ投与の可否を血液内科のコンサルトの上 同剤を導入しましたところ2例目も著効(◎_◎;)。1年半経過しリンパ腫再発の兆候なく良好に経過している事も報告いたしました。
第3例目としてMTX服用中に肘に急速な皮下腫瘤が出現し短期間で増大した症例を報告。リウマチ結節の好発部位であり、超音波所見上も血流豊富な腫瘤であるもMTX中止しても消退せずより増大。MTX関連リンパ腫は所属リンパ節以外に肺 皮膚 骨髄 脊髄 陰部と体のあちこちに出現(-_-;)することもしばしばあり、基幹病院の腫瘍外科にコンサルトし生検施行頂きました。結果の写真をいただこうと思っておりますとスライドが1枚のみ到着(-_-;)。
自学自習で病理学を勉強せよ!とのメッセージと思い、急いでアマゾンで顕微鏡を検索。『スマホ撮影可能な顕微鏡』『2750円』と『口コミ4.2』が目に飛び込み『最近の顕微鏡はやっすいんやなぁ~』とワンクリックして購入し送って来たのがスマホをくっつける吸盤だけでしたとお話ししましたところ場内大爆笑(^^;)。病理医として今後転身する予定がないので、ケチって『8750円の小中学生観察日記用顕微鏡』を購入したお話しましたらまたまた大爆笑。
顕微鏡が到着したところ、かなり軽くて相当安物感が満載(-_-;)。ケチったが為に失敗したと思いきや予想以上に鮮明に病理組織がスマホ画面に映し出されました。病理組織所見として壊死組織の周囲を取り囲む様にリンパ球 組織球を中心とした炎症細胞の浸潤が見られ血管内皮細胞の腫大化を認める所見であり『リウマチ結節』と確定診断。安心してMTXを再開した事を報告。・・・ここからいよいよ本チャンのリンパ腫の真相に?迫ります!…第3編に続きます。
第24回リウマチ病診連携の会にて講演して参りました(第3編)
今回の『第24回リウマチ病診連携の会』の講演でスライドが多数の為 4編に分けてレポートする予定です。前回の続きからの『第3編』を報告します。当院のメトトレキサート関連リンパ腫が3例発症し幸い全例消退するも、残念ながら新規発症の4例目は消退せず『MALT型悪性リンパ腫』に至り血液内科にて入院に至った事を報告しました。
そもそも悪性リンパ腫は所属リンパ節から発生しますが、前回に報告した様に肺や皮膚 消化管粘膜にもしばしば見られ、当院の患者さんも全く無症状で検診で胃カメラを行ったところ偶然にも多発性腫瘍が見つかり組織生検を施行したところ異型細胞が多数検出され、粘膜層まで浸潤。免疫染色を行ったところ…
CD20陽性B細胞 CD3陽性T細胞 その他の免疫染色機から EBウイルス陰性のMALTリンパ腫と診断。即刻メトトレキサート中止にて腫瘍は縮小するも完全に消退せず、MALTリンパ腫のもう一つの要因とされるヘリコバクターピロリ菌も認められなかった事から、残念ながら悪性リンパ腫として血液腫瘍内科にて治療となりました。幸い低悪性度の為 抗がん剤は使用せず放射線治療で完治する可能性が高く少し安心しております。
当院の患者さんに非常に酷似した症例が昨年慶應義塾大学病院から報告されており、メトトレキサート内服中に左頚部リンパ節の腫脹と胃の粘膜潰瘍からMALTリンパ腫と診断。EBウイルス陽性 ヘリコバクターピロリ菌陽性から、メトトレキサート休薬+ピロリ菌除菌療法にて頚部リンパ節腫大も含めて胃粘膜病変も綺麗に消退し完治した事が報告されておりました。しかし…一方では…
こちらは東北大学病院の先生方からの本年4月の最新の報告では…たった6カ月のメトトレキサートの内服後に胃痛が出現し胃カメラを施行しましたところ…胃粘膜に多数の腫瘍性病変が見つかり、組織生検➡免疫染色 ウイルス同定検査➡EBウイルス陰性 メトトレキサート関連 瀰漫性 B細胞型リンパ腫と診断。当院の症例の同様にメトトレキサート休薬にて縮小するも完全に消退せず悪性度の高い事から悪性リンパ腫として抗がん剤の治療を行い幸いにも腫瘍は消失したと報告しておりました。
MTX関連LPDの報告は多く見られますが、なかなか全体の集計するのは難しく、その真相に迫るべく、MTX-LPD究明のコアメンバーの中心的存在であります埼玉医科大学 血液内科 教授 徳平道英 先生が纏め上げ 今年の6月に総集編(20本のレビューの総マトメ)が論文として報告されました。組織生検をガッチリ行い、病状経過 転帰 予後をしっかりフォローした225例のMTX関連リンパ腫について報告された論文です。①消退群 ②再発再燃群 ③残存非消退群 ④急速全身進行群の4つにタイプに分けて詳しく論評されておりました。
①消退群は自然治癒する一番安心なタイプですが、 ②再発再燃群は一旦消退するも半分1年以内に異なる免疫抑制剤にて再発し抗がん剤の適応、 ③残存非消退群 ④急速全身進行群は全くMTXの休薬では歯が立たず即刻抗がん剤治療が必要となるタイプに分類。これまでMTXを製造販売しているメーカーさんの報告では①の消退群が80%、②の再発群が10%、③+④の残存進行群が10%と記されていましたが…どうやら徳平先生の論文では厳しい数字でありました。発症し易い患者さんとして女性優位 平均年齢66歳、平均罹病期間12年、MTX平均内服期間6年、病期3以上が多い傾向と報告されています。しかしリンパ腫の予後を左右するキーワードは病理組織とEBウイルスを挙げておりました。
原発性悪性リンパ腫のWHO分類は多岐に渡りますが、MTX関連リンパ腫も同様に多種類を極めることから徳平先生は225例全例に組織生検施行し 詳細に組織の調査を行い6種類に分類されております。頻度別に…
EBV+DLCBL=EBウイルス陽性 瀰漫性B細胞型リンパ腫(当院症例①はこのタイプであったと推察されます)
DLBCL‐NOS=EBウイルス陰性 瀰漫性B細胞型リンパ腫
CHL=古典的 ホジキン型リンパ腫
P-LPD=多型性リンパ腫(当院の症例③はこちらに含まれます)
EBV+MUCU=EBウイルス陽性 粘膜節外型リンパ腫
NS-LPD=非特異型リンパ腫(当院の症例②はこちらに含まれます。)
これら6タイプの組織分類がどの様な転帰 予後の経過を辿るか①消退群 ②再発群 ③残存群 ④全身進行群に群別し各群毎の発症率、最も重要な抗がん剤(化学療法後)生存率のを詳細を報告されています。…第4編に続きます。
第24回リウマチ病診連携の会にて講演して参りました(第4編)
第3編の続きですが、MTX関連リンパ腫を組織のタイプ別にEBV+DLCBL=EBウイルス陽性 瀰漫性B細胞型リンパ腫、DLBCL‐NOS=EBウイルス陰性 瀰漫性B細胞型リンパ腫、CHL=古典的 ホジキン型リンパ腫、P-LPD=多型性リンパ腫、EBV+MUCU=EBウイルス陽性 粘膜節外型リンパ腫、NS-LPD=非特異型リンパ腫の6種類に群別し、①消退群 ②再発群 ③残存非消退群 ④急速全身進行群と組み合わせますと…
全体的には①消退群が多くを占める印象ですが…組織のタイプによっては抗がん剤(化学療法)が必要な黄色や赤が(再発群や進行群)目立つグループ認められます。やはり進行群が多いタイプはEBウイルスと関連の無い瀰漫性B細胞型リンパ腫で、EBウイルス陽性のB細胞型リンパ腫と消退率が大きく異なるのがわかります。また、原発性悪性リンパ腫で最も予後良いとされるホジキン型(中心のリードシュテルンベルグ細胞のみが悪性で、周囲の異形成細胞は反応性に異形が認められる為 腫瘍全体の量が大変少ないとされています)が、MTX関連リンパ腫では消退率が低く治療も難渋することが多い状況です。又、粘膜節外病変もEBウイルス陽性から消退群が多く、当院2例目の症例と同じタイプとされるも非特異型リンパ腫も消退群が多い結果に。
最も重要とされます、MTX-LPD発症後に化学療法を受け生存率が比較的高いのはEBウイルス陽性 瀰漫性B細胞型リンパ腫、非特異型リンパ腫、EBウイルス陽性 粘膜節外型リンパ腫であり一方で、様々な組織を有する多型性リンパ腫はタイプによっては生存率が低く、EBウイルス陰性 瀰漫性B細胞型リンパ腫の再発群 残存非消退群、古典的 ホジキン型リンパ腫の再発群 進行群の生存率が低いのが気になるところです。これらの生存率の低いタイプの多くはEBウイルス陰性のタイプが多くを占め、EBウイルスとMTX-LPDとの関連性は低いと言う報告もありますが、徳平先生の文献ではやはりEBウイルスとの関連が重要と言えそうです。
単純に掛け算 割り算で数字を出すものでは無いですが、225例のうち消退したのが50%を切っており(48%)、MTX-LPDにて半数以上が抗がん剤(化学療法)の適応とはかなり厳しい数字であり、しかも化学療法を行った患者さんの3割弱(28%)が亡くなっているのは個人の感想としましても『医原性としての生存率が大変低く』由々しき事態と言えそうです。化学療法の線引きとなる危険因子としてEBウイルス以外の関連性は?
徳平先生の論文の報告では完全に証明されていませんが、リウマチ罹病歴が長い人(慢性炎症の持続している状態)や高齢女性(加齢性変化から免疫異常が出やすい)、白血球の遺伝子多型を挙げておりました。特筆べき点としましては一番の消退型では『第1編』でお話しましたEBウイルスの監視役のCD8陽性の細胞障害型Tリンパ細胞がNK細胞と共に減少した後に増加回復する事が判明しており、今後CD8陽性T細胞の回復の仕組みが判明すれば、再発型 残存非消退型の進展の予防が可能となりそうです。
MTX-LPD発症時に自然消退するか、再発 残存し化学療法の適応となるかのもう一つの目安となるのが『発症時の可溶性IL-2レセプターの値、CRP値 高熱』が重要と報告されている文献を紹介。可溶性IL-2レセプター値が4000以上(相当高値(◎_◎;)、CRP5.0㎎/dl以上、発熱の状態にて消退群になるか、再発群 残存非消退群になるかが予見されるとの事。当院の自然消退群の患者さんはやはり発症時に発熱無く、CRPも1~2㎎/dl台で可溶性IL-2レセプター値も886U/ml、1052U/mlと4000台には至らない低値の為 消退したかと推察できます。
長期MTX内服され罹病期間が長い患者さんに対しても漫然とMTXを投与せず、特に病期が進んでおりLPDの発症リスクが高い場合も積極的MTXの減量 可能であれば休薬し、その他の抗リウマチ薬を代用、医療コストはかかってもMTX非併用可能な生物学製剤や経口JAK阻害剤の使用を検討し、既に生物学製剤(JAK阻害剤)とMTX併用中の場合は積極的MTXの休薬、再燃時は生物学製剤(低用量であればJAKも)投与量を増やす、トリアムシノロンアセトニド局所療法を積極的に行うべきかと考えます。
MTX関連LPDにはまだまだ不明な点が多く、今後安心安全にMTXを内服して頂く為にもより具体的な研究調査が進むことを祈念しております。以上4編に及びましたが第24回リウマチ病診連携の会の講演内容の御報告を致します<(_ _)>。